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■カリスマ・・・
ファンド・マネージャーの仕事をしている頃、上司に言われたことがあった。

「ファンド・マネージャーという仕事は3年続いて普通。5年続いて上手。10年続けば神様」と。

私はなんとか11年間ファンド・マネージャーという仕事を続けることが出来たので、上司の言葉を借りれば「私は神様」ということになる。しかし、10年を超えた段階でも自分が「相場の神様」だなんて思ったことはない。

相場の局面において「上手い」と自惚れたことは何回かあったということはこの場をかりて告白させてはもらうが、ファンド・マネージャー時代に「神様」「名人」などと思ったことはなかったし、他のファンド・マネージャーに対してもそのように思い至るような人は残念ながらいなかった。
 

そう言えば、「相場の神様」だとか「相場の名人」だといった話が出ると思い出す本がある。それは、中島敦の「名人伝」である。

主人公の紀昌は弓矢の名人になりたくて修行を積むのだが、射之射ではなく不射之射を知らなければならぬ、と言われさらに修行を積む。

修行が終わって下山してきた彼は決して弓矢を射ることはしない。しかし、世間からは「名人」と称せられて一生を終わるのである。誰も彼が矢を射ったところを見たこともないのに。しかも、晩年、彼は弓矢を見て「これは何に使う道具か」とさえ人に訊いたと伝えられている。

運用を忘れたファンド・マネージャーはいないだろうが、"芸術の深淵"、"芸術家の理想像"とは何かということを考えさせられる本であると思っている。

そういう意味では、「カリスマ…」などというタイトルは簡単につけてはいけないのである。多くの場合、「かりそめ…」でしかない。

(2003/04/21記 川口一晃)


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